[潮音禅師物語]vol.2 幼くして良将の素質
5才のときでした。お母さんが重い病気にかかり、家中懸命の看病にも拘らず、亡くなってしまいました。それは子供心に強烈な衝撃をあたえました。以来、厳しいお祖母さんのもとで育てられましたが、その頃の遊びとえばお墓を作って花を供えたり、仏像をお参りする真似をして楽しんでいました。
8才のお盆のときですが、1人で母のお墓を掃除して灯明を点すと、お母さんの思い出がこみ上げ、その場で泣き出してしまい、それを見た人ももらい泣きされたそうです。
そして、9才になると、慈雲寺の泰雲和尚について手習いをはじめました。利発で負けず嫌いの性格はたちまち頭角を現し、他の子から抜き出ていました。子供同士で戦ごっこして遊んでも一方の旗頭となり、少しの傷に怯むこともなく、かえって先頭にたって立ち向かうのです。時に通りかかった侍がこの姿を眺めて、「武士の子供に生まれていたらきっと素晴らしい良将になっていたことだろう」と、呟かれたといいます。
出典:潮音道海禅師の生涯
発行者:潮音道海禅師三百年遠忌大法会実行委員会