絵画
白衣観音図(びゃくえかんのんず)
背後に瀑布をともなう懸崖のなか、岩上に坐して静かに瞑想する観音を描く、典型的な白衣観音の図様を示し、補陀洛観音に由来し、中国における神仙思想とも融合しながら、宋時代以降に広く流布した。本図は14世紀前半から中葉に遡り得るもので、白衣観音図の初期的な様相を示す希少な作例であり、水墨画に彩色の観音を配した特異な一例として貴重である。
潮音禅師肖像画(ちょうおんぜんじしょうぞうが)
江戸時代前期に館林を中心に活躍した黄檗宗の高僧「潮音道海」を描いた禅宗肖像画、いわゆる頂相(ちんそう)である。斜め向きを主体とする中世臨済禅の頂相形式と異なり、黄檗禅に特有の正面向きの形式をとっている。整った画絹に鮮やかな色彩で潮音の全身像を描き、画面上部には像主の自賛が記されている。潮音の往時の姿を迫真的に描き写す貴重な肖像作例であり、画面左下の印により肖像画家として名を馳せた「喜多元規」の優れた画技が発揮された黄檗美術の優品である。
潮音禅師肖像画裏書き
兆殿司瀧見観音書像乙幅喜捨武州*橋徳峯菴加藤久右衛門延宝八庚申年孟秋念五日
萬徳潮音書