縁起
開山
- 大拙祖能禅師
- 諡号:廣圓明鑑禅師
- 臨済宗建長寺第四十九世
- 臨済宗円覚寺第四十世
中興開山
- 潮音道海禅師
中興開基
- 直伝覚心居士(須田七郎兵政本)小山市寒川町
- 大機宗信居士(吉田六左衛門) 熊谷市四方寺
宝林寺の縁起については、再三の火災により、詳細は現在に伝えられていないところもありますが、開山が大拙祖能禅師であり、数多くの弟子を輩出し、また、中興開山潮音道海禅師の時代には、伽藍が建立されていたとする記録もあり、潮音道海禅師を慕い、数多くの僧侶がこの地に訪れたといいます。現在では、本堂と鐘楼堂を伝えるのみとなっていますが、その当時の隆盛は想像に難くないものと考えられます。
中興開基である須田覚心居士が、「師(潮音道海禅師)が慕われている中国天目山の中峰国師の法孫で、大拙祖能禅師が建立した寺が上州にありますが、大変荒れたままで檀信徒は再建を望んでいます」と潮音道海禅師に云い、この話を聞いた潮音道海禅師は、もとより中峰国師の禅風を最も慕っていたため、その再建に頗る意欲を見せました。そこで、須田覚心居士は、武州四方寺村(埼玉県熊谷市)の邑長吉田六左衛門宗信(大機居士)、その弟吉田四郎兵衛、栗原助左衛門、森田権右衛門等と諮って、潮音道海禅師を上州眞福山宝林寺に迎えることになったのでした。寛文7年(1667年)2月15日、潮音道海禅師は上州新福寺村(群馬県邑楽郡千代田町)の眞福山宝林寺に進山されました。その住山の偈に
- 瓶錫相携入寳林
- 門庭寂寞緑苔深
- 国師面目依然在
- 明月一天耀古今
- 瓶錫 相携えて寳林に入れば
- 門庭 寂寞として緑苔深く
- 国師の面目依然として在り
- 明月一天 古今に耀く
と詠まれました。潮音道海禅師の寳林寺復興に対する意欲は燃え住民を集めて「当塗王経(観音経)」の講義をはじめました。それは、豊かな学識と薀蓄のある見事な講義で、住民にとっては長い旱魃のあとの慈雨のごとく、人々の心は揺り動かされましたから、忽ち領内の大評判になりました。
この評判が館林城に伝わり、ときの城代家老金田遠江守正勝(梅山居士)と家老の本多甚左衛門(古巌居士)が「近頃江戸で評判の潮音道海禅師が領内にいるなら、城内にお招きして法話を聞きたい」と直ぐに迎えを出しました。そして、館林城での法苑は20日あまりに及び、城代家老金田遠江守正勝をはじめ数多くの家中が帰依しました。その評判もまたたくまに関東一円にひろまり、老若男女問わず、法苑が開かれるとそれを聞くために数千人とも知れず、ときには一郡が傾いてしまうといわれるほどの人が集まりました。
和暦 | 西暦 | 概要 | 関係 |
---|---|---|---|
徳治元年 | 1306年 | 寳林寺草創 | 寳林寺 |
天正年間 | 1573~91年 | 兵火により荒廃 | 寳林寺 |
承応 三年 | 1654年 | 隠元禅師、長崎に上陸 | 隠元禅師 |
寛文元年 | 1661年 | 徳川綱吉公、館林藩主となる 隠元禅師、京都宇治に黄檗山万福寺を開創 | 広済寺/隠元禅師 |
寛文七年 | 1666年2月15日 | 中興開山潮音道海禅師寳林寺進山 | 寳林寺 |
寛文九年 | 1669年 | 徳川綱吉公、萬徳山廣済寺を開創 木庵禅師を開山に奉じ、十月十日、潮音道海禅師二代住持として進山 | 広済寺 |
金田遠州太守、観音像を造立す。 | 広済寺 | ||
寛文十年 | 1670年 | 黒田信濃守(泰嶽居士)、洪鐘を鋳し、萬徳山に鎮す | 広済寺/寳林寺 |
寛文十一年 | 1671年 | 室賀総州守、康祐法眼に命じて天人師像(釈迦如来像)を造立す。佐野吉之丞渡辺平左衛門、迦葉阿難二尊を造立す。 | 広済寺/寳林寺 |
寛文十二年 | 1672年 | 康祐に命じ、祖翁の寿像(木庵性瑫禅師)を造立す。(現:普賢寺安置) | 広済寺/普賢寺 |
延宝元年 | 1673年 | 智堂徒、方丈を建つ | 寳林寺 |
延宝2年 | 1674年 | 曽我予州太守、法鼓造る | 広済寺 |
方丈竣工 | 広済寺 | ||
観月、人を化して緊那羅王を造立す。 | 広済寺/寳林寺 | ||
延宝5年 | 1677年 | 大綱知客、浦山宗融、鈴木徳心、境屋一玄、韋駄天像、伽藍神像(華光菩薩)、初祖像(達磨大師)を造立す。 | 広済寺/寳林寺 |
掃雲院夫人、禅悦堂を建つ | 広済寺 | ||
吉田、高柳二氏、浴室を構営す | 広済寺 | ||
延宝6年 | 1678年 | 慈照知客、法華経を血書し、募化して弥勒像(布袋尊)を造立す。 | 広済寺/寳林寺 |
延宝七年 | 1679年 | 潮音道海禅師「旧事本紀大成経」正部四十巻刊行 | 潮音禅師 |
天和三年 | 1683年 | 五月二八日徳松君没し、館林城取り壊し令下る 萬徳山廣済寺取り壊し 什物・用材等寳林寺へ | 広済寺/寳林寺 |
〜元禄三年 | 〜1690年 | 伽藍竣工 | 寳林寺 |
元禄八年 | 1695年 | 潮音道海禅師、万亀山臨川寺にて示寂 | 潮音禅師 |
元禄十年 | 1697年 | 京七条中仏所二十六代仏師康祐三男康倫 釈迦如来像造立 | 寳林寺 |
〜慶応二年 | 〜1866年 | 再三たる大火により焼失 | 寳林寺 |
明治三十四年 | 1901年 | 本堂再建 | 寳林寺 |
平成十八年 | 2006年 | 本堂・山門再建 | 寳林寺 |
平成二十四年 | 2012年 | 庫裡再建 | 寳林寺 |
平成二十八年 | 2016年 | 鐘楼堂再建 | 寳林寺 |
令和四年三月十八日 | 2022年 | 寳林寺黄檗宗彫像群 群馬県重要文化財に指定 | 寳林寺 |
令和四年三月二十三日 | 2023年 | 白衣観音図/潮音禅師肖像画 千代田町重要文化財に指定 | 寳林寺 |
令和五年十二月十四日 | 2023年 | 杉山芳廣氏 地蔵菩薩立像を造立、奉納 | 寳林寺 |